第3512回例会 卓話者 認定NPO法人Peace Field Japan理事 村橋真理 様 演題:「10月7日から考えること」

卓話者 認定NPO法人Peace Field Japan理事 村橋真理 様
演題:「10月7日から考えること」

本日の卓話は、認定NPO法人Peace Field Japan理事 村橋真理様により、「10月7日から考えること」という演題で、お話しいただきました。
10月7日とは、ハマスによるイスラエル南部のコミュニティへの襲撃が開始された日であります。村橋様より、当日の卓話内容の要約版を送付いただきましたので、以下に掲載させていただきます。是非、ご一読をお願いします。

2023年は、久しぶりにKIZUNAプロジェクトを行うことができました。川崎ロータリークラブの皆様のご支援によって実現できましたこと、心から感謝申し上げます。
パレスチナ人と日本人の大学生を対象としたプログラムとなりましたが、体験を通して、持続可能な社会のあり方について一緒に考える機会となりました。以前参加したイスラエル人とパレスチナ人参加者もボランティアスタッフとして参加し、日本人のボランティアスタッフの若者たちと一緒に、プログラムの運営にあたりました。

2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部のコミュニティへの襲撃から始まった、今回のハマスとイスラエルの戦争は、落ち着く兆しもないまま犠牲者だけが増えていき、心を痛めるばかりです。過去にKIZUNAプロジェクトに参加した参加者16人が住む集落も襲撃を受け、参加者とその家族はおかげさまで無事でしたが、同じ集落の住人、生まれた時から兄弟のように一緒に成長してきた友人の多くが犠牲、人質になり、大きなショックを受けています。その後のイスラエル軍によるガザ侵攻でのガザの人々の犠牲も3.5万人を超え、人道状況は過去に例を見ないほど深刻です。KIZUNAプロジェクトの参加者が暮らす西岸地区も、状況はやはり深刻です。

”平和”をどう定義するか、多岐に渡ると思います。平和学の父といわれるガルトゥングは、”平和”を二つに分けて説明しています。
消極的平和=戦争のない状態
積極的平和=貧困、抑圧、差別などの構造的暴力がない
また、平和の文化(Culture of Peace)という概念があります。争い・対立を暴力によってではなく創造的対話によって解決していくという価値観と行動様式を意味します。

現在のガザの状況は、まず、停戦することが求められていますが、その先に、そもそも構造的暴力がない状態にしていくことが不可欠です。10月7日以来の状況は、“構造的暴力”が放置されてきた状況を再認識させられるものでした。とても多様な社会であること、また、当事者のみならず国際社会の影響が大きいこともあり、どのように問題を捉え、考え、感じるのかもとても多様です。今こそ問題の根源的な解決が求められていますが、その行方、未来の姿はいまだに想像もできません。

このような状況を変えること、共存を目指して、これまでのKIZUNAプロジェクトのパートナー団体は活動を続けてきました。

2013-2019のKIZUNA協力団体であるEcoPeace (イスラエル人、パレスチナ人、ヨルダン人が地域の環境のために協働している団体)、また、2023年のKIZUNA協力団体であるパレスチナのWomen of the Sunとイスラエルのパートナー団体のWomen Wage Peaceが、2024年のノーベル平和賞にノミネートされました。Women of the SunとWomen Wage Peaceは、Mother’s Callというパートナーシップ宣言をしていて、母親として、子どもたちの明るい人生を実現したいという、シンプルな目標、価値を共有しています。両方のリーダーが、TIME誌のWomen of the Yearの中の2人に選ばれました。

一方、2004年のプログラム実施に協力してくれた、イスラエル人の平和活動家、ヴィヴィアン・シルバーさんが、10月7日、住んでいたキブツが襲撃を受け、亡くなりました。長年、ガザのパレスチナ人と一緒に活動してきた人です。息子さんがBBCのインタビューに”これは、社会が根本的な解決に向き合おうとしてこなかった結果。平和は努力しないと得られないもの”と答えています。

“人”が社会を変えるので、”平和”を創る“人”を育てていくことが時間はかかっても、現状を変えていくことにつながると思います。“命が大切” というような共通の価値観を見出す、そのために妥協し、自ら変わる勇気、自分の“論理”にこだわらず、調和を優先する姿勢、そのために相手の話を聞く姿勢(対話)、信頼関係を築く場。これらが、構造的暴力を取り除いていく一歩ではないでしょうか。

2010年の参加者のプログラム最終日のスピーチです。
「小菅村のとても美しい風景の中で、心を開き、知恵と気持ちを共有することができました。私たちは、どう人が自然と持続可能な暮らしを保てるのかを学び、社会への責任を担っていること、お互いに気遣いすること、共感すること、尊重しあうこと、そして、平和への希望、自然と共にある平和、自分たち自身の平和、お互いの平和があることも学びました。」

今年は、現地情勢の影響で、三地域の学生たちが集まってのプログラムの実施は断念し、日本人の学生を対象に、里山体験からの学びに、Peace Environmental Building(環境による平和構築)のコンセプトを取り入れ、”持続可能な平和”について考えるプログラムを行います。パレスチナ人の教育者が来日し、サポートしてくれます。これからの”平和な社会”を担う若者を育成し、次につなげたいと思っています。引き続き、ご支援いただけますよう、お願い申し上げます。